【後編】救命処置とは?あなたにもできる人助け!何か起こる前に事前準備を始めよう!
では、今回は救急処置に関しての【後編】をお届け致します。
【前編】では、周囲の安全の確認から胸骨圧迫までの内容をお伝えしました。
【後編】では、人工呼吸からAEDの使い方など、より細かくお伝えしていきます。
是非、最後までご覧ください。
【前編】のコラムも併せてお読みください!!
https://www.smartway.co.jp/column/colum/takemura73
救命処置とは?
まずは【前編】の復習も兼ねて基礎的な部分、救命処置とはどのようなものか?をおさらいしていきましょう。
救命処置とは…
「心臓や呼吸が止まってしまった場合への対応」
のことを指します。
怪我や病気の中でも最も重篤で緊急を要する心臓が止まってしまったとき、呼吸が止まってしまったときに対応する応急手当のことを救急処置と表現します。
救命処置の手順をご紹介
救命処置にはいくつかの手順が存在します。
手順は7つあります。
- 安全の確認
- 反応の確認
- 119番通報とAEDの手配
- 呼吸の確認
- 胸骨圧迫
- 人工呼吸
- AEDの使用
上記の7つの手順を覚えておきましょう。
※一次救命処置は成人も小児も同じ手順で行います。
人工呼吸
人工呼吸を行う際には以下の2つの手順で行います。
- 気道確保(頭部後屈あご先挙上法)
- 人工呼吸(口対口人工呼吸)
それぞれについて説明していきます。
気道確保(頭部後屈あご先挙上法)
傷病者ののどの奥を広げ、空気を肺に通しやすくするために行うものです。
片手を傷病者の額に当て、もう一方の手で傷病者のあご先を持ち上げます。この時、人差し指と中指の2本で支えると行いやすいです。
あご先を持ち上げ頭部を後ろにのけぞらせるようにし、あご先を持ち上げます。(あご先挙上)
《ポイント》
指であご先の柔らかい部分を強く圧迫してしまうと気道が塞がる形となり、気道が狭くなってしまうため、注意が必要です。
人工呼吸(口対口人工呼吸)
気道を確保した状態のまま、額に当てた親指と人差し指で傷病者の鼻をつまみます。
自分の口を大きく開け、傷病者の口を覆ってぴったりとくっつけて傷病者の胸が上がる程度の息を吹き込みます。
その後、一度口を離して同じ要領でもう一度息を吹き込みます。
《乳児の場合》
乳児の場合には、口対口人工呼吸を行うことが難しい場合があります。この場合には、口対口ではなく乳児の口と鼻を同時に自身の口で覆う口対口鼻人工呼吸を行います。
《ポイント》
- 2回の息の吹き込みで、いずれも胸が膨れ上がることが理想です。ですが、もし胸が上がらない場合でも息の吹き込みは2回までとし、2回人工呼吸を行ったのちにすぐに胸骨圧迫を再開します。
- 人工呼吸を行う際には、胸骨圧迫を一度中断します。ですが、その中断時間は10秒以上にならないように注意しスムーズに人工呼吸を行うようにしましょう。
- 息の吹き込みを2回試みても胸が1回も上がらない状態が続く場合には、無理に人工呼吸を行おうとせず、胸骨圧迫のみを繰り返し心肺蘇生を行うようにしましょう。
- 傷病者の顔面や口から出血がある場合など口対口人工呼吸を行うことで、感染のリスクがある場合などには無理に人工呼吸を行おうとせず、胸骨圧迫のみで心肺蘇生を行います。
- 上記のような感染リスクがある場合でも口対口人工呼吸を行う場合には、一方向弁付き感染防止用シート、一方向弁付き人工呼吸用マスクなどがありますので必要に応じて持ち歩くようにすると役立ちます。
※人工呼吸に自身がない場合、ためらってしまう場合には無理に人工呼吸を行うよりも胸骨圧迫のみを絶え間なく継続する方を優先しましょう。躊躇することで、正しく呼吸を入れることはできないだけでなく、助けられる確率も低下してしまう可能性があります。
AEDの使用
AEDを使用する際の手順をまずはお伝えしていきます。
- AEDを傷病者の頭の近くに置く
- AEDの電源を入れる
- 電極パッドを貼る
- 心電図の解析
- 電気ショック
- 心肺蘇生の再開
上記6項目に沿って進めていきます。
AEDの電源を入れる
AED本体の蓋を開けて、電源ボタンを押します。
電源を入れたのち、音声ガイドに従って指示された手順で準備を進めていきます。
※現在はAED本体の蓋を開けたと同時に自動的に電源が入るタイプが主流となってきています。このような自動で電源が入るAEDのことを「オートショックAED」と言います。
電極パッドを貼る
傷病者の衣類を脱がせ、胸など、体幹部が見える状態にします。
AEDのケースに入っている電極パッドを取り出し、保護シートから剥がしたのち、電極パッドに描かれているイラストの位置に電極パッドを傷病者に身体に貼り付けます。
AEDの機種によっては電極パッドのケーブル差し込みを直接AED本体の差込口に挿入するタイプもありますので、どのようなタイプのAEDなのかを確認しながら進めましょう。
《ポイント》
- AEDにはいくつかの種類が存在します。
- 小学生から大人用のパッドと未就学児用のパッド2種類が入っているもの
- AED本体に未就学児用モードに切り替えるスイッチがついているもの
など、AEDの機種によって仕様が異なります。
上記のような場合には、小学生以上には成人モードで対応し、未就学児(小学生以下)には未就学児モードで対応するようにしましょう。この時、小学生以上に未就学児モードで対応しないように注意しましょう。
また、タイプによっては未就学児用の電極パッドの貼りつけを胸と背中に貼るものもあります。電極パッドの間に心臓が来るように貼りつけを行うことが重要ですので、認識しておきましょう。
※未就学児モードの場合には、電気ショックが弱く、小学生以上の場合には十分な効果を得ることができません。反対に、未就学児に対して、成人モードで対応しても大きな問題はありません。
- 電極パッドは胸の右上(鎖骨の下)と胸の左下側(わきの5~8㎝下、乳頭の斜め下部分)の位置に貼り付けを行います。貼り付ける目安の場所は電極パッドにイラストで表示されていますので、イラスト通りに設置すれば問題ありません。
- 協力者がいて自分ひとりで対応している状態ではなく、可能であれば電極パッドを貼りつける際にも胸骨圧迫は継続的に行いましょう。
- 電極パッドは肌との間に隙間ができないように注意しましょう。しっかりと肌と密着させ、アクセサリーがある場合にはアクセサリーを外す。下着なども脱がせるか避けるなどの対応を行い、直接肌と触れるように注意しましょう。
心電図の解析
電極パッドを貼りつけると「身体から離れてください」とい音声メッセージが流れます。
AEDの操作を行う人がAEDの音声メッセージと共に、周囲の人が傷病者の身体から離れるように大きな声で「皆さん離れて!」と指示を出します。誰も傷病者の身体に触れていない状態になるように注意しましょう。
その後、AEDが自動的に心電図の解析を行ってくれます。
- AEDが電気ショックを流す必要があると判断した場合には「ショックが必要です」
- AEDが電気ショックを流す必要はないと判断した場合には「ショックは不要です」
という音声が流れます。
AEDの音声が適切に聞き取れるように周囲の環境を整えるようにしましょう。
「ショックは不要です」の音声が流れたあとは、電気ショックを行う必要はないため直ちに胸骨圧迫を再開します。
AEDは2分おきに自動的に心電図解析を行います。AEDの音声メッセージに合わせて対応を進めましょう。
電気ショック
AEDが電気ショックが必要と判断した場合には、自動的に充電を開始します。
充電が完了するとAEDから「ショックボタンを押してください」という音声が流れます。
AEDの操作を行う人がその後「ショックを行います!身体から離れて!」という声掛けを行い、周囲の人たちが傷病者の身体に触れていないことを必ず確認して、問題がなければそのままショックボタンを押し、電気ショックを行います。
《ポイント》
- AEDの操作を行う人はショックボタンを押す際に、誰も傷病者の身体に触れていないことを必ず確認します。自分を含め、身の回りの人が身体に触れないように大きな声で注意を促しましょう。
- 電気ショックによって、傷病者の身体に強い電流が流れ、身体が一瞬ビクッと突っ張るような状態となりますが、不安にならずに正常な電気が流れた状態であることを確認しましょう。
- 電気ショックが必要だと判断した場合にはショックボタンを押さなくても自動的に電気ショックが行われる「オートショックAED」という機種も存在します。その際にはカウントダウンの音声も流れますので、AEDの音声に合わせて、周囲の人たちで協力しながら適切な処置を行いましょう。
《AEDに関する補足》
事故は様々な場所で発生する可能性があります。
通常とは異なる状態でAEDを使用する際にはいくつかの注意点がありますので、内容を把握しておきましょう。
- 傷病者の身体が濡れているとき
- パッド接着部分に貼り薬などがある場合
- 心臓ペースメーカーや除細動器がある場合
- 下着が邪魔をしている場合
上記のような場合にはどのように対応するのが適切かを説明していきます。
- 傷病者の身体が濡れているとき
電極パッドを貼りたい位置や、その周囲に水分がある場合にはタオルや清潔な布などで水分をふき取ってから電極パッドを貼りつけます。
その時、電極パッドを貼りつけない背中や床面は濡れていても問題ありません。周囲まできれいに水分をふき取るのではなく、あくまでも電極パッドを貼り付ける部分の水分を素早くふき取ることを意識しましょう。
- パッド接着部分に貼り薬などがある場合
胸に貼る薬で電極パッドを貼りつける際に邪魔になるものの一例として、ニトログリセリン製剤や、喘息薬が挙げられます。
これらの薬が胸に貼りつけられている場合には外しても問題はないため、薬を外し、肌に残った薬剤もふき取った後に電極パッドを貼りつけましょう。
- 心臓ペースメーカーや除細動器がある場合
胸の皮膚が盛り上がっていて、下に固いものがある場合にはペースメーカーであることを認識できます。
電極パッドを貼りつける部分に該当している場合には、ペースメーカーや除細動器を避けて電極パッドを貼りつけるようにしましょう。
- 下着が邪魔をしている場合
電極パッドを貼りつける位置に下着がある場合には下着をずらし、正しい位置にパッドを貼りつけるようにしましょう。
その際、対応者はためらわずに相手の命を救うために下着をずらす行動を行います。協力者の中に女性がいる場合には、その対応のみを女性に任せることや、周囲の目への配慮のために壁を作るようにするなど、周りの人たちと協力して対応するように心がけましょう。
AEDの使用と心肺蘇生の継続
AEDの心電図解析は自動的に2分おきに行われます。その間、胸骨圧迫と人工呼吸を繰り返し行います。
胸骨圧迫30回と人工呼吸2回(30:2)のサイクルを繰り返し行います。
この30:2のサイクルとAEDの使用は救急隊員が現場に到着し、傷病者を引き継ぐまで行い続けます。途中で自己判断で心肺蘇生を中断することはないように注意しましょう。
《心肺蘇生を中断する場合》
心肺蘇生を中断するときは以下の3つが挙げられます。
- 救急隊員と交代したとき
- 救助者自身の身の危険が迫ったとき
- 傷病者に普段通りの呼吸が戻り、反応があった場合
上記の3つ以外の状態で心肺蘇生を中断することは基本的にはありません。自己判断で心肺蘇生を中断することのないように注意しましょう。
- 救急隊員と交代したとき
救急隊員が見れたからといって心肺蘇生を中断するのではなく、救急隊員と交代するまで心肺蘇生は継続して実施しましょう。その後、救急隊員へ発見時の状況や、対応内容などの引継ぎを行います。
- 救助者自身の身の危険が迫ったとき
事故はどのような場所で発生するかわかりません。災害時などはもしかすると津波や土砂崩れなど、自身の身に危険が迫ってくる可能性もあります。そのような状態の場合には、傷病者よりも自身の身を守る行動をとりましょう。
- 傷病者に普段通りの呼吸が戻り、反応があった場合
心肺蘇生を継続したことで、傷病者に普段通りの呼吸が戻った場合や、呼びかけに反応する、目的のあるしぐさを行うなど明確な表現があった場合には心肺蘇生を一度中断します。その後、傷病者の状態を常に確認しながら救急隊員の到着をその場で待ちます。
この時に、呼吸が戻ったかわからない、反応したかわからない状態で心肺蘇生を中断しないようにしましょう。あくまでも明確な表現があった場合に限ります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は救急処置について【前編】【後編】2つに分けてお伝えしてきました。
目の前の人が突然倒れるかもしれません。家、職場、電車の中、いつだれがどのような状態になるかは予想がつきません。
何かが起こってから学ぼうと思っても、練習しようと思っても事態が起こってからだと手遅れになってしまいます。
身近な人を守るためにも今からいざというときの準備を始めませんか?
今回の記事を読んで少しでも救急処置について学ぶきっかけになれば嬉しいです。
筆者も札幌市で開催している救急処置の講習会に参加してきましたが、心肺蘇生の内容や手順が分かっていてもいざ、実践しようとなったときにスムーズに行うことができるか不安はありました。
一回限りではなく、定期的に内容を見直したり、実技を行うことで実際に対応するときにスムーズに行うことができると身に染みて感じました。
スマートチェーン全店では、お客様に安心・安全な環境で運動を行っていただけるようにスタッフ全員が救命講習を受講しております。
通っていただく皆様に楽しんで運動をしていただけるよう、今後も取り組んでまいります!
7月も終わり8月!夏も本番となって参りました!今年の夏も楽しい夏に!皆様のご来店をスタッフ一同、お待ちしております!!
- スマートウェイ/スタジオ/メディカルフィットネス小樽店
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所属の健康運動指導士トレーナー竹村です。
内科系疾患・整形外科疾患・予備軍の方に向けた健康増進施設、指定運動療法施設にてトレーナー従事中
運動を行う上での効果やポイント、身体についての知識など、運動に関わる様々な情報を発信していきます。