バランスと転倒リスク~健康に長生きするためのトレーニングをして介護予防をしていこう
メディカルフィットネス パーソナルトレーナー・理学療法士のタケダです。
以前は"バランス"についてを少し取り上げました。
バランスが悪いと転倒につながりやすいのですが、一口に転倒と言っても軽いものからそれがきっかけで車椅子生活や、寝たきり生活になってしまう…なんてこともあります。
メディカルフィットネスではこういったバランスと言ったところにも着目し、身体状況の評価を行う場合もあります。
転倒リスクを少しでも少なくし、怪我の予防、健康寿命をより長くできるようにトレーニングを行っています。
この記事では、バランスや転倒リスクの評価方法とトレーニング方法についてをまとめていこうと思います。
「まだ若いから大丈夫!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、評価(テスト)を行ってみると実は「全然できなかった」なんてこともあるので、この記事を見ながらチェックしてみましょう。
バランスとは?
まず初めに、バランスについて理解を深めましょう。
バランスには色々な要素が組み合わさっているので、まずは、その要素について考えてみましょう。
身体重心(center of gravity:COG)
身体重心(center of gravity:COG)とは身体全体の重さの中心であり、姿勢の変化によって重心の位置は変化します。重心位置は低いほど安定し、高いほど不安定となります。
立っているとき(静止立位姿勢)の重心は第2仙骨前方と言われていて、成人男性の場合は下から約56%の高さ、成人女性の場合は下から約55%の位置にあると言われています。
上半身の重心位置は第7~9胸椎の位置に、下半身の重心位置は大腿部上から1/2~近位1/3を結んだ中点の位置にあると言われています。
支持基底面(base of support:BOS)
支持基底面(base of support:BOS)とは、身体が床面に接している部分のことで、身体を支えるベースとなります。
支持基底面が広く、重心位置が支持基底面の中心に近いほどバランスは安定します。
逆に、支持基底面が狭かったり、重心位置が支持基底面の外側に近いほどバランスは不安定となります。
上の図のように青で囲った部分が支持基底面として考えらえれます。
①は普通の足の幅で立った時。両足の接地面を囲った範囲に重心を置くことで、バランスを保つことができます。
②は足の幅を広くしました。足の幅を開くと①よりも支持基底面が広くなったのがわかります。重心が大きく左右に動いたとしても、①よりも広い範囲で重心を動かすことができるため、バランスが保ちやすくなります。
③普通の足の幅に、杖をつきました。杖も身体を支えているので、支持基底面に含まれます。そのため支持基底面が①よりも広くなりました。杖をつくと歩行が安定するのはこのためです。
例)高齢者は転びやすくなるイメージがあると思いますが、バランスを保つために足の幅を開いてバランスを保ったり、腰や膝を曲げた姿勢で重心を低くしてバランスを保とうとしている、という風に考えることもできます。
静的バランス
静的バランス能力とは、動かない状態を保ち続けるための能力です。
身体が転倒しない程度にできる姿勢やその姿勢を維持するための筋力や骨の支持力が、静的バランス能力に必要な要素として挙げられます。
さらに外的なストレスを受けた時でも転倒しない姿勢を保ち続けられる機能も必要です。(例:立っている、座っている)
動的バランス
動的バランス能力とは、動きを伴いながらも転倒しない状態を保ち続ける能力です。
動きが伴うためバランスを保つために必要な身体の機能は刻々と変化します。
したがって人体には高い機能が求められます。(例:歩行)
バランス・転倒リスクの評価方法
バランス能力をチェックするテストを、ここではご紹介します。
ご自分でできるようなものもあるので、この記事を読みながら一緒に行ってみましょう!
片脚立位テスト
運動器不安定症を診断する基準のひとつとして、日本整形外科学会が指定しているテストの一つです。静的バランスの検査として行います。
テスト方法は、一方の足を床から離し、足を5cm浮かせた状態でタイムを計測します。
支持脚の位置がずれた時や、支持脚以外の身体の一部が床に触れたときまでの時間を計測します。
この測定結果が5秒以下だった場合、転倒ハイリスクであると考えます。
15秒未満であった場合、運動器不安定症の可能性が考えられます。
高齢者では固有受容感覚(自分の身体の動きや位置や力加減に関する感覚)の低下により視覚情報の入力がより必要となるため、開眼よりも閉眼時のバランス機能の低下の方が大きくなります。
TUG
運動器不安定症を診断する基準のひとつとして、日本整形外科学会が指定しているテストの一つです。動的バランスの検査として行います。
テスト方法は、椅子に腰かけた状態から立ち上がり、3m先の目標物にむかって歩き、折り返してから再び深く着座するまでを観察・時間の計測をします。
このテストでは、所要時間や歩数・動作がどのようになっているのかをみてバランス能力・転倒リスクといった面を評価するだけではなく、立つこと・座ることの能力、歩行能力、方向転換の能力等、一つのテストで沢山のことを評価することができます。
この測定結果が13.5秒以下だった場合、転倒リスクがあると考えます。
11秒以上であった場合、運動器不安定症の可能性が考えられます。
運動器不安定症とは
"歩行時にふらついて転倒しやすい、関節に痛みがあって思わずよろける、骨に脆弱性があって軽微な外傷で骨折してしまう"などの病態を疾患としてとらえたもの。
「高齢化にともなって運動機能低下をきたす運動器疾患により、バランス能力 および移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状態」と定義されている。
診断には、日常生活自立度の判定や運動機能評価(開眼片脚起立時・TUG)と、脊椎圧迫骨折および各種脊柱変形(亀背、高度腰椎後彎・側弯など)、下肢骨折(大腿骨頚部骨折など)、骨粗鬆症(骨がもろくて骨折しやすい)、変形性関節症(股関節、膝関節などの関節が痛くなる)、腰部脊柱管狭窄症(立っているときに足に痺れや痛みがでる)、脊髄障害(脊髄症、脊髄損傷など)、神経・筋疾患、関節リウマチおよび各種関節炎、下肢切断、長期臥床後の運動器廃用(長い期間寝たきりであったもの)、高頻度転倒者 といった運動器疾患や状態であるかが診断基準とされています。
10m歩行テスト
歩行能力を把握するために行うことが多いですが、その時間によって、転倒リスクがあるのかどうかを判断することもできます。
普段の歩行速度で行ったり、最大限の歩行速度を計測して、比較することもあります。
テスト方法は、10mの歩行スペースと、その前後に3mの予備路を準備して、10m歩行の歩数と歩行時間の計測を行います。
10m歩行速度が12.5秒以内の場合、屋外での歩行が可能なレベル、25秒以上の場合は屋内での歩行が可能なレベルと判断したりします。
また、12.5秒以内で屋外での歩行が可能なレベルと判断はしますが、10m歩行速度が10秒以上かかる場合、横断歩道を時間内に渡り切れない可能性があると判断します。
ファンクショナルリーチテスト (functional reach test:FRT)
テストの方法は、立った状態で腕を90°上げて、できるだけ前方に手を伸ばしていくだけです。バランスを崩さず、どれだけ手の伸ばすことができたか、その距離を測定します。
この測定結果が18.5cm未満の場合は転倒リスクが高いと考えます。
ファンクショナルバランススケール(functional balance scale:FBS)、バーグバランススケール(Berg balance scale:BBS)、機能的バランステスト
高齢者や脳卒中患者様のバランス機能を評価するための指標です。
椅子座位からの立ち上がり、立位保持、座位保持、着座、移乗、閉眼立位保持、閉脚立位保持、上肢の前方リーチ、床から物を拾う、左右の肩ごしに後ろを振り向く、360°回転、段差踏み替え、継ぎ足位での立位保持、片脚立位保持の14項目で構成される検査です。
安全面や時間の計測等の評価を行い、それぞれ0~4点で評価し最大で56点となります。
この測定結果が45点以下の場合、転倒ハイリスクであると考えます。
参考:FunctionalBalanceScale.pdf (human-press.jp)
バランス能力のためのトレーニング
バランス能力をUPするために行うこととしては、前述した”支持基底面”や”重心位置”を利用したトレーニングを行うと良いです。
例)支持基底面を狭くして不安定な状況を作う、重心の位置を不安定なところにセッティングする、重心の移動速度を早くしてみたり遅くしてみたりするなど。
また、支持基底面や重心位置といった内容に、バランスディスク等の様々なアイテムを使用することで不安定な要素を作って行うとより効率的に、バランスに対してアプローチすることが可能です。
例)バランスボールの上に座ってエクササイズ、バランスパッドやバランスディスクの上に立ってエクササイズなど
メディカルフィットネス札幌北12条店・小樽店では"パワープレート"を使用したトレーニングを行うことができます。
パワープレートの3次元ハーモニック振動は、1秒間に25〜50回の振動で、上下・左右・前後とあらゆる方向から正確な振動を同時に発生させ、全身の細部に負荷をかけることができます。
自然なバランスが崩れるため、身体は元の状態に戻そうとして多数の筋肉が刺激されます。この反射的反応を利用し運動を行うことで、バランス能力の改善をはかることができます。
実際にメディカルフィットネスを利用されている方は、定期的にお身体の状態の評価を行い、ほとんど全ての方でバランス能力の改善が認められています。
▼詳しくはこちら
まとめ
今回は、バランスと転倒リスク~健康に長生きするためのトレーニング についてをまとめました。
片脚立位テストは、ご自宅などでご自分で行いやすい簡単なテスト方法です。実際にやってみると意外とできない方がいらっしゃるので、是非まずはセルフチェックから行ってみましょう。
そして、測定結果に不安があった方は、トレーニングを私たちと一緒に行いませんか?
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メディカルフィットネス北12条店所属 理学療法士のタケダです。
整形外科疾患、内科疾患の方、予備軍の方に向けた指定運動療法施設 メディカルフィットネスにいます。
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