身体が硬い人必見!柔軟性とストレッチ~適切な方法とタイミング~
メディカルフィットネス パーソナルトレーナー・理学療法士のタケダです。
日々トレーナーとしていろいろな会員様を担当させていただいている中で、時々「何が筋トレで何がストレッチなのかよくわからない」といったお声をいただくことがあります。
ということで今回は“柔軟性”と”ストレッチ”についてをご紹介します。
柔軟性
柔軟性とは関節可動域(ROM:Range Of Motion)を全体にわたって動かせる能力のこと、筋肉と腱が伸びる能力のことで、筋力・瞬発力・持久力・調整力とともに基本的な運動能力のひとつとされています。弾力性と可塑性を適切に備えていることを言います。
弾力性は筋と結合組織の両方が伸長されたあと、通常の長さに戻る能力のことです。これがないと伸ばされたら伸びっぱなしとなってしまいます。
可塑性とは結合組織(筋・腱・靭帯)が伸長されたあと、元の長さに戻るのではなく、より伸長された新たな長さに達する能力のことを言います。こういった能力がないと動きに適応していけません。
柔軟性は、“骨格構造”・“軟部組織”によって決まります。
“骨格構造”は先天的な要素が多く、努力で変化しにくいです。
“軟部組織”は筋組織・筋膜・腱・靭帯・関節包のことを指しますが、こちらは骨格構造とは違い変化させることが可能な組織です。
柔軟性を以下の二つに分けて考えることができます。
静的柔軟性(Static Flexibility)
関節可動域(ROM:Range Of Motion)のことです。いわゆる皆さんがイメージする身体の柔軟性の部分です。
動的柔軟性(Dynamic Flexibility・Kinetic Flexibility)
運動時に動かすことができる関節最大可動域。関節可動域における動きやすさ、運動のしなやかさのことを指します。
柔軟性と感覚受容器~反射と抑制~
柔軟性を考えるときに大事な要素となるのが“筋紡錘”と“ゴルジ腱器官”です。
筋紡錘(muscle Spindle)
筋紡錘は、筋線維内に存在する感覚受容器で、筋の長さと伸長速度を感知する働きを持っています。この働きによって、筋の過剰な伸長が避けられ、ケガを防ぐことができます。
筋紡錘によっておこる反応を「伸長反射(stretch Reflex Myotatic Reflex)」と言われています。筋紡錘が伸長されると、それに対する反射として伸張反射が起こります。この反応がケガから身体を守るメカニズムです。
例)肉離れ(筋挫傷)は筋が急激に引き伸ばされ受傷しますが、筋紡錘がそれを感知して筋を収縮させることでケガから身体を守る働きをしています。
ゴルジ腱器官(GTO:Golgi Tendon Organ)
ゴルジ腱器官は、筋に過度の張力や急激な張力が加わった場合に筋を弛緩させ、筋を守る働きを持っています。特殊な働きを持つ感覚受容器(固有感覚受容器)で、筋と腱の接合部に存在し、腱の長さ(筋の張力の変化と、筋の収縮によって生み出された力)を感知して、筋を弛緩させる働きをします。
ゴルジ腱器官が筋の緊張を緩和する働きは「自動抑制(自原抑制)(Autogenic Inhibition)」と言われます。この働きが起こるまでに20~30秒を要します。ゴルジ腱器官の働きは筋紡錘の後で起こり、筋紡錘よりも時間がかかります。
相反抑制(Reciprocal Inhibition,Inverse Inhibition)
主動筋(agonist)の収縮によって拮抗筋(antagonist)が弛緩するときに起こります。
例)膝関節を伸ばした時太もも前側の大腿四頭筋が主動筋となりますが、その収縮によって拮抗筋であるももの裏のハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)は収縮が抑制され弛緩することになります。
柔軟性が低下すると起こること~柔軟性を高めることの利点~
柔軟性が低下すると、
普段の運動量が少ない→関節可動域が狭くなる→筋線維の変性が起こり線維化する→普段の運動量が少ない→関節可動域が…
と悪循環に陥ってしまいます。
それに対し柔軟性を高めると、
関節可動域が拡大する→関節運動量が増える→消費カロリーUP…
と身体にとって良い影響ばかりです!
例)この事を歩行に置き換えて考えてみましょう。
歩行では、股関節や膝関節の関節可動域が狭くなる→歩幅が小さくなる→運動量が少なくなり消費カロリーDOWN→筋の線維化→股関節や膝関節の関節可動域が狭くなる→歩幅が…と悪循環になります。それに対し柔軟性を高めると、股関節や膝関節の関節可動域が拡大する→歩幅が大きくなる→運動量が多くなり消費カロリーUPとなっていきます。
「ダイエットしたいけど、身体が硬くて運動がうまくできない」といった方は、まずは柔軟性に着目してい運動していくといいですよ。
ストレッチの種類
静的ストレッチ(スタティックストレッチ:Static Stretching)
反動をつけずに筋をゆっくりと伸ばしていくストレッチ。20~30秒、一定のポジションを保ちながら徐々に伸ばしていきます。(ゴルジ腱器官が働いて筋紡錘による収縮反応が抑えられます。)より大きな関節可動域を得られるようにする方法です。
一般的に、運動後に行うのが良いとされています。運動によって生じた代謝老廃物が蓄積した部位への血液循環を促し、除去する効果が得られるとされているからです。運動前に行うと過度に筋をリラックスさせてしまう可能性があり、逆に力が発揮しずらくなってしまうということが起こるためです。ただし、運動開始前に明らかに硬い筋がある、といった場合は静的ストレッチ(スタティックストレッチ)が有効になります。
動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ:Dynamic Stretching)
関節可動域全域にわたってコントロールした一定の動作を行い、目的とする筋群への血流を促進したり、筋温を上げてウォームアップしたりする方法。
運動開始時に行うのが良いとされていてケガの予防、競技動作をスムーズにすること、パフォーマンスアップすることを目的としています。
バリスティックストレッチ
反動を使って素早い爆発的な動きを行うもので身体を十分に温めた状態で行い、振り子のように反動を使って動かす方法です。
最大瞬発力を発揮するスポーツに適したストレッチです。ラジオ体操もこの方法に分類されます。
PNF(固有受容性神経筋促通法:Proprioceptive Neuromuscular Facilitation)
2人一組で行うストレッチで、筋の自動抑制(自原抑制)と相反抑制を活用した方法です。
リハビリなどでよく使われているストレッチで、十分な知識と指導経験をもつトレーナーのもとで行いましょう。
PNFストレッチには“ホールドアンドリラックス”・“コントラクリラトックス”と言った種類があります。
”ホールドアンドリラックス”は、等尺性収縮(アイソメトリック)を利用した方法です。等尺性収縮後に筋をストレッチすると、筋緊張が緩和されるという働きを利用して関節可動域を広げる方法となります。
”コントラクトリラックス”は、等張性収縮(アイソトニック)を利用した方法です。一定の力をかけながら関節を動かしていく方法となります。
PNFストレッチは運動開始前に行うのが良いとされています。
SMFR(Self Myofascial Release)(自発的筋膜リリース)
筋の自動抑制(自原抑制)の原理に基づく手法です。フォームローラーと言われる筒状の物を用いて、その圧力によって筋収縮を引き出し弛緩させる方法です。(筋や結合組織に外圧を加えることによって、筋を緩める方法となります。)自動抑制を用いる方法なので、固い部位に対して20~30秒の圧力をかける必要があります。
フォームローラーの外圧で筋紡錘が働き筋収縮が引き出され、ゴルジ腱器官の働きが優位になり、筋の弛緩が引き出されるまで筋長全体にわたってローラーを垂直にあてて行います。
運動開始前に行うのが良いとされていて筋のアンバランスや極端に硬い筋に対してストレッチを行い、バランスを整えることができます。
まとめ
今回は柔軟性とストレッチについてご紹介しました。
反射や抑制といった身体機能を理解することで、より効果的にストレッチができるのではないでしょうか?
方法やタイミングを参考に柔軟性を上げていきましょう!
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メディカルフィットネス北12条店所属 理学療法士のタケダです。
整形外科疾患、内科疾患の方、予備軍の方に向けた指定運動療法施設 メディカルフィットネスにいます。
多くの方にとって役立つ情報を配信していきます。
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