第30回日本心臓リハビリテーション学会 学術集会 「メディカルフィットネスの可能性」
はじめに
7月13日(土)・14日(日)に、神戸国際展示場・神戸国際会議場にて開催された第30回日本心臓リハビリテーション学会学術集会に参加しました。本学会は、心臓リハビリテーション・メディカルフィットネスに関わる医療従事者にとって、最新の情報や研究成果を共有し、議論する場として重要な役割を果たしています。
印象に残った発表:メディカルフィットネスの視点から
今回の学術集会の中で、特に印象に残ったのは、「心臓リハビリテーション、その先にあるもの、メディカルフィットネスの可能性」と「外来リハビリから生涯のリハビリに繋げるには」というセッションです。このような全国規模の学会でメディカルフィットネス単独のセッションが組まれるのはとても嬉しいことで、注目度の高さが伺えますね・・・!メディカルフィットネスの視点からそれぞれの発表を振り返り、今後の課題と展望について考えます。
1. 高齢者における心臓リハビリテーション
高齢者の心疾患患者数は増加傾向にあり、地域での心臓リハビリテーションの重要性がますます高まっています。しかし、高齢者は筋力や体力低下、認知機能障害、うつ病などの合併症を抱えていることが多く、従来の心臓リハビリテーションプログラムでは効果が得られにくい場合があります。
メディカルフィットネスの観点から見ると、高齢者向けの心臓リハビリテーションプログラムは、以下の点に重点を置く必要があります。
- 個別化されたプログラム:高齢者の個々の体力や機能レベルに合わせた、個別化されたプログラムが必要です。
- 運動以外の要素の取り入れ:運動に加えて、栄養指導、心理的なサポート、社会的な活動など、高齢者の健康状態を包括的に改善するための要素を取り入れる必要があります。
- 地域の資源の活用:地域にある医療機関、介護施設、スポーツクラブなどの資源を活用し、高齢者が継続的にリハビリテーションに取り組める環境を整備する必要があります。
高齢者向けのメディカルフィットネスは、高齢者のQOL (Quality of Life) の向上に効果的なことが期待されています。
2. 外来心臓リハビリテーションの現状
しかし、外来心臓リハビリテーションの普及率は、欧米諸国に比べて低く、現状では十分に活用されていないのが課題です。
厚生労働省の調査によると、2017年における外来心臓リハビリテーションの参加率は5.2%にとどまっています。これは、欧米諸国の30~40%と比べて とても低い数字です。
また、外来心臓リハビリテーションプログラムの内容や質も施設によって様々であり、患者のニーズに十分に応えられていない場合も少なくありません。
3. 外来心臓リハビリテーションの課題
外来心臓リハビリテーションの普及が遅れている理由としては、以下のような課題が挙げられます。
- 患者の認知度が低い:多くの患者は、外来心臓リハビリテーションの存在を知らず、あるいは必要性を感じていないという問題があります。
- 医師の理解度が低い:一部の医師は、外来心臓リハビリテーションの効果を十分に理解しておらず、患者に積極的に勧めていないという問題があります。
- プログラムの体制が整っていない:外来心臓リハビリテーションを実施できる医療機関が不足しており、プログラムの内容や質も施設によって様々であるという問題があります。
- 患者の経済的な負担:外来心臓リハビリテーションは、健康保険で一部がまかなえますが、患者の自己負担金が発生する場合もあります。
4. 心臓リハビリテーションのエビデンス
心臓リハビリテーションの効果を裏付けるエビデンスは多数蓄積されています。メディカルフィットネスの観点から見ると、特に以下の点に注目されます。
- 運動習慣の改善:心臓リハビリテーションは、運動習慣の改善に効果的なことが示されています。運動習慣の改善は、生活習慣病の予防や改善に効果があり、長期的な健康増進につながります。
- 筋力・体力の向上:心臓リハビリテーションは、筋力・体力の向上に効果的なことが示されています。筋力・体力の向上は、日常生活動作の改善や転倒予防に効果があり、高齢者の自立した生活を支えます。
- 精神面の改善:心臓リハビリテーションは、精神面の改善に効果的なことが示されています。精神面の改善は、うつ病や不安の予防・改善に効果があり、QOLの向上につながります。
これらのエビデンスは、地域で生活を送る心疾患をお持ちの方にとって、心臓リハビリテーションが効果的な手段であることを示唆しています。
今後の課題と展望
今回の学術集会を通して、メディカルフィットネスおよび心臓リハビリテーションの重要性と今後の課題について改めて認識することができました。
・特に心臓リハビリテーションの認知度の拡大と、患者自身への啓蒙活動
・心臓リハビリテーションの提供内容の質の向上
・心臓リハビリテーションに関する研究の推進
これらの課題に取り組むことで、より多くの人々がメディカルフィットネスプログラムを受けられるようになり、心疾患患者のQOL (Quality of Life) の向上に貢献できると期待されます。
まとめ
第30回日本心臓リハビリテーション学会学術集会は、メディカルフィットネスの視点からみた心臓リハビリテーションを考える貴重な機会となりました。
今後は、今回の学術集会で得た学びを活かし、地域の方々にどう貢献することが出来るのか?改めて考え、ていきたいと思います。
参考資料
- 一般社団法人日本心臓リハビリテーション学会:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0167527322012542
- メディカルフィットネス:https://blog.methodistcollege.edu/what-is-medical-fitness
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